露点温度とは
相対湿度(RH)に関する前回の記事に続いて、2番目によく使用される湿度パラメータである露点温度について見ていきましょう。露点温度とは、気体を冷却していくとき水蒸気が飽和する温度のことです。この現象を理解するには、シャワーを浴びるときのことを考えると分かりやすいでしょう。シャワーの高温パイプと低温パイプが断熱されていない場合は、低温パイプの表面に水滴が発生しているのを見たことがあるかもしれません。このとき何が起こっているのでしょうか。
温度21°C、相対湿度50%RH の浴室を仮定しましょう。シャワーで水を流し始めると、冷たい水の流れがパイプの表面温度を下げ始め、パイプ周りの空気を冷やします。特定の温度になると、結露が発生し始めるのがわかります。これは、パイプの表面温度が低下して、周囲の空気が水蒸気を気体の状態で維持できなくなっているためです。この温度を露点温度と言います。
露点温度が有用なパラメータである理由
露点温度は、多くの工業用湿度計測分野において有用なパラメータです。多くの場合、プラスチックや圧縮空気乾燥など、相対湿度が通常10%RHを下回る用途で乾燥度を計測するために使用されます。このタイプの低湿度計測機器は露点計と呼ばれています。ヴァイサラ DRYCAP® 技術に最適なアプリケーション例といえます。
露点温度の重要な点としては、乾燥用途に加えて、空調用途や換気用途および高湿度の用途でも有用なパラメータであることです。
相対湿度とは異なり、露点温度は温度に左右されません。制御目標が温度20(±1)°C、相対湿度40(±2)%RH に設定されているクリーンルームを例に見てみましょう。こうした条件では、相対湿度は最適な管理パラメータではない場合があります。相対湿度は温度に依存するため、安定した温度を維持しようとしながら空間を乾燥または加湿することは事実上不可能です。解決策としては、代わりに露点温度を管理パラメータとして使用することです。20°Cで40%RHの相対湿度は、6.0°Cの露点温度に相当します。露点の管理帯域が狭いと、環境条件の管理とエネルギーの節約が容易になる場合があります。
もう1つの使用例が高湿度環境です。高湿度環境では、計測センサーに結露が発生した場合に、センサーが十分に乾くまで計測が不可能になるおそれがあります。こうした環境では、ヴァイサラ HUMICAP® HMP7 湿度温度プローブ などを使用することで問題を回避できます。HMP7は、湿度センサーを温度が高い状態に保ち結露を防ぎます。これにより、結露しやすい環境でも信頼性と再現性の高い露点温度計測を実現できます。この機能が役立つ用途例としては、電池の効率と寿命を最大化するために高湿度が不可欠であるPEM燃料電池が挙げられます。
前述の例で見たように、露点温度は飽和蒸気圧の関数です。外圧を考慮すると、計算は少し複雑になります。外圧は、たとえば圧縮空気の用途で重要になります。露点温度は温度に依存しませんが、圧力に依存します。圧力が高いほど、露点温度は低くなります。これらのパラメータを操作するための実用的なツールの1つが、ヴァイサラの湿度計算・変換ソフトです。