CO2計測を飛躍的にスマートに:CO2回収に関するインタビュー

Irene Zakrzewski, R&D Manager at Vaisala, with the MGP241 in hand
二酸化炭素回収
イノベーション・インスピレーション
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新発売のヴァイサラMGP241は、重工業向け、特にCO2回収、有効利用、貯留(CCUS)用途に向けて、飛躍的に進化したCO2計測を提供すべく設計されています。 

気候変動対策において、CCUSは最も注目を集める技術的ソリューションのひとつです。革新的な“答え”が極めて重要:私たちは、CCUSをより効率的かつ現実的な価格とし、世界の気候目標を達成するために拡張性を備え、さまざまな産業に活用できる計測機器を必要としています。新しく発売されたMGP241は、特にCCUS用途に最適であり、重工業向けに飛躍的にスマートなCO2計測を提供することを目的としています。ヴァイサラの研究開発プロジェクトマネージャーIrene Zakrzewskiに、どのようにして短期間、わずか12ヶ月で新しいMGP241を開発できたのか、その経緯を尋ねました。

 

質問:今、なぜMGP241が必要なのでしょうか。

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MGP241 connectors enable constant measurement and data flow

Irene Zakrzewski、研究開発プロジェクトマネージャー(以下「I.Z.」):気候変動の現状において、真に差し迫った危機を感じています。この製品の背景は、非常に明確です。私たちは世界の脱炭素化に貢献したい、ということです。世界は、脱炭素化のためのソリューションを何年も待つことができません。私たちは、今すぐにこの課題に対応する方法を見つける必要があるのです。私たちは、意図的にこのプロジェクトに12か月という期限を設定しました。CCUS市場で先行者利益を得るためにも、迅速な行動は重要です。 意志あるところに道は開ける、ということですね。

 

Q:"飛躍的にスマートに"というテーマについてお聞きしたいのですが、MGP241において、それはどういう意味でしょうか。 

I.Z.:"飛躍的にスマートに"というキャッチフレーズには、多様な意味が含まれています。コンパクトで消費電力が低いこと、運用設備とプラグ&プレイ接続できる互換性があること、一般的な既存のガス分析器などと比較して設置と運用における費用対効果が優れていること、などです。すべてを挙げるのは難しいですが、これらをすべて実現し、継続的なメンテナンスが不要、かつリアルタイム計測データを提供できる計測機器、それは“飛躍的にスマートに”と言えるでしょう。CCUS計測における未だかつてない革新。今まで汚染物質であったCO2を、貴重な資源かつ収入源へと変えるのに必要です。MGP241は、従来のCO2計測機器を凌駕する効率、費用対効果、使いやすさを提供する、単にスマート、という選択肢だけに留まらず、“飛躍的にスマートに”なった製品です。

 

Q:研究、開発、設計のプロセスについて教えてください。

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Irene Zakrzewski, R&D Manager at Vaisala, with Antti Heikkilä, Product Manager of the MGP241

I.Z.:私たちがめざしたのは、お客様の製造工程内を含む最も過酷な環境にも設置可能な、年に1回の点検だけで稼働し続ける、真の次世代計測機器の開発です。設置と運用に費用も労力も必要とする従来のガス分析器とは異なるものを目指しました。 

私たちはCCUSの開発動向を注視していました。点排出源/燃焼後におけるCO2回収および直接空気回収(DAC)の両方のニーズ、特に新しいタイプの高濃度CO2計測機器のニーズが、設計上の選択に大きく影響しました。もちろんヴァイサラには既に、世界中の数多くのDACシステムや現場に採用されている、低濃度(ppm)CO2向けの優れたソリューションがあります。

私たちは、プロダクトマネージャー、研究開発チーム、事業開発チームを集め、共同で解決策の開発に取り組みました。当初から、私たちは何のために何をしているのか、非常に明確な共通理解を持っていました。開発においては、私たちの技術力と運用管理能力を網羅し、「何を」を「どのように」という市場のニーズと組み合わせたという、非常に総合的な試みから始まりました。実は当初は2つの製品コンセプトで競っていたのですが、最終的にMGP241の開発へ繋がったコンセプトを採用しました。

 

Q:MGP241は誰にとって最も有用でしょうか?

I.Z.:私たちは、CCUSプラントや関連機器メーカー、CO₂回収プラント事業者の実際のニーズに対応するように設計しました。MGP241は、CO₂回収プロセスの管理、最適化において“常時計測”が必要なお客様に最適です。

 

Q:MGP241は、グリーントランスフォーメーション、気候危機対策、カーボンニュートラルな未来の実現にどのように貢献できるのでしょうか。

I.Z.:MGP241は、CO₂回収プロセスにおいて最大限の信頼性を実現します:重量2kg未満、使用電力24V DC電源のみの使用で、サイズ、エネルギー、経済性の面で真に小さなフットプリントと、非常に小さな総所有コスト(TCO)を実現します。MGP241は、CO₂回収プロセスをはるかに効率化し、透明性を高めます。回収量を確実に計測できない限り、運用全体の意味は失われてしまいますよね?

 

Q:開発プロセスの話に戻りましょう。主要なマイルストーンについて教えてください。このプロジェクトの達成を確信したのはいつでしたか。

I.Z.:約2か月でPoC、概念実証の準備ができました。必要不可欠な機能と、あれば便利、という機能の識別がとても重要でした。

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Irene Zakrzewski, R&D Manager at Vaisala, with the MGP241 in hand

この情報を得るべく、複数のお客様を訪問しました。多くの深層インタビュー、調査、現場訪問、実地テストを行いました。開発においては、常にこのような取り組みが不可欠です。計測機器が実際に使用されている現場で学び、適応します。

当初、非常に高いプロセス圧力下でも動作するという開発要件がありました。 実際には、多くのCO₂回収プロセスでは、プロセスの一部が高圧であったとしても、圧力と温度がMGPに適した設置場所があり、単純な圧力調整装置によってガスのサンプルを大気圧まで下げることは明らかに容易です。事実として、そうしたプラントにおける既存の計測ソリューションでも、同様に対応するのが一般的です。

プロジェクトチームの1人、シニアハードウェアテストエンジニアは、日本の製品開発理論、特に狩野モデルについて学習したばかりでした。私たちは、お客様インタビューと調査で得たすべての情報を収集し、狩野モデルを使用した結果、高圧に関する要件は、主にNice-to-Have、あれば便利、であることがわかりました。そこで、高圧に関する要件に対応するよりも、市場投入までの時間短縮を優先することを決断しました。私にとっては、こうした決断は、私たちが本当に目標達成に向かっている、製品の実現が近づいているということを実感させてくれます。

 

Q:ヴァイサラの他のCO2計測機器との違いは何でしょうか?

I.Z.:MGP241はヴァイサラにおいて、最も堅牢なCO2計測機器です。高温、低温、ヘビーデューティな工業プロセス、過酷な使用など、基本的にどんな状況にも耐えられるように作られています。プロセスの温度と圧力は高くなることがあり、溶剤ベースのプロセスでは、通常、湿度も非常に高くなります。プロセスによっては、アミン、アンモニア、炭酸カリウムなどの化学物質に曝露されることもあります。このため、MGPは、過酷なプロセス条件に耐えられるように、サファイアとスチールのプローブ先端を完全に密封した形で開発されました。これらすべてを組み合わせることで、MGP241はCO₂回収だけでなく、産業用CO2計測において最適な製品となっています。もちろん、爆発の危険性のある環境でCCUSの運用が行われる場合は、防爆対応のMGP260シリーズをご使用いただきます。

 

Q:今回の最大の学びを簡単にまとめていただけますか。

I.Z.:チームのスキルと技術の両面において、適切な能力が必要です。 また、自分たちが何のために何を行っているのかについての共通理解、これをすべてお客様の本質的ニーズに繋げるのが鍵だと思います。他にどんな複雑で困難なチャレンジがあったとしても、こうした道を照らしてくれる北極星があれば解決できます。

最後にもう1つ、成功したいなら優秀なメカニカルエンジニアは不可欠です!
 

Q:楽しいインタビューをありがとうございました。

I.Z.:こちらこそ、ありがとうございました!

 


新しいヴァイサラMGP241マルチガスCO2プローブは、2024年11月1日に発売されました。 
詳しくは、vaisala.com/ja/mgp241をご覧ください。

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