アプリケーションノート

高品質な湿度温度変換器でデータセンターのPUE(電力使用効率)を改善する方法

データセンターにおける電力使用量は、世界中で増加の一途をたどる電力消費量の一角を占めています。米国における最近の数値によると、データセンターの電力使用量は国内全体の1.8%に上ります。そのエネルギー消費の大半は、コンピュー タ機器の使用によるものを超えて、冷却によるものです。別 の環境的配慮として、蒸発冷却に使用される浄水が挙げられます。人工知能の利用も含めた多くの対策が、データセンター の電力使用効率(PUE)の理想的な比率に向けた改善を目的としています。

屋内/室内空気質

冷却コストを抑えるうえで最も重要な要 件となるのは、第一に環境を適切に計測 することです。最初に考えるべきことは次のような事項です。

  • 計測対象は何か?たとえば、エアサイドエコノマイザーまたは間接蒸発冷却 器を制御する必要があるのか?アプリ ケーションによって計測する湿度パラメータが変わってきます。
  •  計測場所はどこか?設置場所は、代表的な場所である必要があります。屋外の湿度と温度を計測する場合、空気の流れがあり、かつ熱を放射し計測を妨げる恐れのある地点から離して、センサを設置する必要があります。
  • 必要な計測精度は?使用している制御システムの仕様要件を考慮に入れま す。これらの要件を満たす計測機器を選定する際には、長期使用時のドリフ トとメンテナンススケジュールも念頭に置く必要があります。
  • 所定の設置場所に適した計測機器を選定。屋外の計測には、屋外環境に対応した計測機器が必要です。
  • 計測機器の検証およびメンテナンス方 法は?すべての計測機器には定期的な校正が必要です。校正には、トレーニングを受けた社員による校正、もしくは外部の校正サービスを利用します。また、 予備の計測機器を数台用意し、工場校正を行いながらローテーションで計測機器を使用するといった方法もあります。状況に合わせて適切な校正方法を選びましょう。

データセンターで通常使用されている湿度温度変換器は、屋外用、ダクト取り付け用、壁取り付け用など、数種類あります。

屋外用湿度計測器

屋外用湿度温度計測器は、エアサイドエ コノマイザーやクーリングタワーに使用されます。エコノマイザーの最も先進的な制御パラダイムは、エンタルピー(熱含量)の差を使用します。外気のエンタルピーを計測したうえで、暖気のリコンディショニングを行うタイミングや外気を使用するタイミングを還気を利用して制御します。

湿球温度出力付き屋外用湿度計測器では、クーリングタワーをいつ使用できるかが直接示されます。湿球温度は、クーリングタワーの使用可能な温度を示しています。屋外の湿度が高すぎる場合、蒸発の速度が弱まり、冷却効果が著しく減少します。

屋外用湿度温度計測器の最も重要な部品の1つにラジエーションシールドがあります。これは、計測に際し、太陽からの熱の影響を低減するものです。一見大した違いがないように見えますが、悪条件下において1~2°Cの温度差が生じることもあります。

屋外用計測器は、非常に冷たい雨や強風などのあらゆる気象条件にも曝されますが、データセンターは24時間365日稼働するため、故障は許されません。

適切な屋外用湿度計測器は、高品質な ラジエーションシールドを搭載しています。プレートの下部にある黒色の面は、 計測器を低温に保つうえで必要不可欠なものです。

ダクト取り付け用湿度計測器

ダクト取り付け用湿度温度計測器は、ダクトやエアハンドリングユニットで設置され、取り込んだ空気の状態を計測・制御するほか、データセンターからの還気を計測します。屋外用湿度計測器を補完するもので、還気と外気間のエンタルピーの差を計算するために使用されます。環境試験器や吸気ダクトの内部に設置されたダクト取り付け用計測器は、過酷な条件に曝される場合があります。

計測機器を設置する際は、定期校正の実施方法を考慮に入れます。設置に際し、多くの場合、基準となるプローブ用のポートを簡単に追加できます。そうすることで、 基準となるプローブをダクトに簡単に挿入でき、その計測値をダクト取り付け用計 測器と比較することができます。

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Humidity and Temperature Transmitter Series HMS80

ヴァイサラHUMICAP® HMS80シリーズ 湿度温度変換器 

壁取り付け用湿度計測器

壁取り付け用計測器は、データセンター内の実際の環境を計測します。湿度条件は通常良好ですが、負荷レベルの変動に対応し、リコンディショニングされた空気とフリークーリングが切り替わるとき、変化の 速度が高まる場合があります。これらの計測器の周囲の空気の流れは、通常、ダクト取り付け用計測器よりも緩やかであるため、温度の変化に対する応答時間は遅めになります。高温のケーブルやその他の機器からガスが抜ける場合もあります。これにより、一部の湿度計測器が代表点より低い湿度を計測する恐れがあります。温度が急速に変化する場合では、水分の制御パラメータとして、温度に左右されない露点温 度の使用が推奨されます。

また、熱負荷(コールドアイルやホットアイ ル)の前後では温度や湿度が劇的に異なるため、計測や制御を行う環境を考慮する必要があります。±0.1°Cや1%RHなどの高い精度で環境を計測する高品質の計測機器を入手するのは簡単ですが、計測器をわずかに動かすだけで精度以上の変化が生じる恐れがあります。

わずかな計測誤差であっても光熱費が大幅に増加する要因になり得るため、高品質な計測機器を入手し、良好な計測状態を維持することが重要です。設置場所を慎重に検討することも重要です。

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