高湿度環境での湿度計測は困難といえます。高湿度による飽和環境では、計測センサを含むすべての表面に結露が発生し、一部のテクノロジーにとって致命的な場合があります。ヴァイサラ HUMICAP® 技術は結露に耐えることが可能ですが、水の影響から回復し、再び信頼性の高い計測を行うには、時間が必要です。高湿度または時折の結露が予想される典型的な用途には、乾燥プロセス、テストチャンバー、空調用空気加湿器、気象計測、および燃料電池が含まれます。
結露環境でも正確で信頼性の高い計測を維持するには、ヴァイサラのプローブ加温技術をご活用ください。温められたプローブは、センサを常に周囲温度より高く保ち、結露が発生しないようにします。プローブの加熱の欠点は、センサが周囲温度を検知できないため、相対湿度を計測できなくなることです。ただし、露点や混合比など、温度に依存しない他のパラメータの計測はできます。また、追加の温度センサを使用して相対湿度を計測することも可能です。
計測方式
プローブ本体内部の内蔵ヒーターがプローブ全体を加熱します。この図では、プローブとフィルタが赤く光っていて、プローブの加温によってフィルタ内の局所的な空気が高温に保たれる様子を示しています。次の例に示すように、実際の温度は周囲温度よりも数度高くなっています。
周囲温度:
Ta = 14°C
RHa = 97%RH
Tda = 13°C
湿度センサ:
Ts = 16°C
RHs = 83%RH
Tda = 13°C(計算)
この例に示すように、加熱は露点に影響を与えません。相対湿度やその他の温度関連のパラメータが必要な場合は、周囲温度を別の温度プローブで計測して、これらのパラメータを計算することもできます。
絶縁および液漏れ防止プロセス接続
高湿度と温度変化が同時に起こる状況では、湿度プローブの設置場所の選択は困難な場合があります。たとえば、排気の湿度が飽和に近く(95%RH)、温度が 40°C の乾燥用途で、フィルタがプロセス内にあり、センサの半分が 25°C の周囲温度にあるようにセンサヘッドが取り付けられている場合、どのようなことが起こるでしょうか。この状況では、プローブの加温でさえ、金属製のプローブ本体を通じた熱伝導によって引き起こされる熱損失を補償できない場合があります。熱損失によりプロセス側にコールドスポットが形成され、結露により計測が不正確になります。ここでの解決策は、プローブを完全に絶縁することです。
プロセスガスが外気よりも冷たい場合は、プローブのプロセス接続を密にすることが重要です。接続に漏れがあると、暖かく、場合によって湿気のある空気がシステムに流入し、センサの近くで結露して計測の問題が発生する可能性があります。
PEM 燃料電池用途などの過酷な条件
過酷な用途では、周囲温度を数度上回るだけでは十分ではない場合もあります。そのような用途の一例は、高分子電解質膜(PEM)燃料電池です。このような特殊用途に固有な構成は、HMT330 シリーズおよび HMT310 シリーズの注文フォームにあります。これらの構成バージョンは、プローブヘッドをより高い電力で加熱することにより、過酷な条件に耐えるように設計されています。加熱機能は Insight ソフトウェアで自由に設定できるため、こういった用途で HMP7 および HMM170 を使用することもできます。
まとめ
センサの飽和は、高湿度および結露環境では、プローブ加温技術を備えた機器を使用することにより回避できます。これに加えて、適切な絶縁を行った漏れのない取り付けにより、信頼性の高い湿度計測のための最良の環境が保証されます。
結露しやすい環境での湿度計測に関するオンデマンドウェブセミナーで詳細をご覧いただけます。(英語のみ)
いくつかのヴァイサラのソリューションには、加温プローブ技術が含まれています。HMM170、HMT317、HMT337、および HMP7 においては、注文時、すべての製品が設定可能です。次の表では、高湿度の産業用途に適したソリューションを一覧にしました。
*USB ケーブルと Insight ソフトウェアを使用して、設定が可能です。
**Modbus レジスターに外部温度情報を書き込むことにより、相対湿度計算が可能です。
t)温度プローブの追加が必要であれば、設定可能です。)