増加している大西洋のハリケーンシーズンに待ち受けるもの 気象学 気象・大気環境 大西洋のハリケーンシーズンに待ち受けるものと、ハリケーンハンターに貢献するドロップゾンデについて 2021年5月20日に熱帯低気圧「アナ」が発生し、平年より活発なハリケーンシーズンが早くも始まりました。2022年のハリケーンシーズンの予測は、平年より活発な状態が常態化しつつあることを示しています。 ハリケーンハンターにドロップゾンデが不可欠な理由 予報士に膨大な情報を提供する人工衛星は重要です。しかし、ドロップソンドはさらにその上をいきます。 ドロップゾンデは、風速や風向、気温、湿度などの高解像度の大気データを収集します。これらの観測機器は、研究者に様々な形で役立っています。嵐の構造を理解し、風の強さやハリケーンの目の表層の気圧の低さを判断するのに役立ちます。この情報はハリケーン予報を向上するために不可欠です。そのデータを得るための最良の方法は、ハリケーンの中心部を航空機で飛行し、ドロップゾンデを放出しながら、様々なレーダーシステムを使って嵐を解析することです。 秒単位で計測器を投下 航空機から投下されたドロップゾンデは、毎分2,000〜3,000フィート(約610~914メートル)で降下している間、観測データを継続的に航空機に送信します。 RD41* ドロップゾンデは、ハリケーンの専門家やハリケーンハンターの航空機のミッションでよく使用されています。ドロップゾンデが送信する観測データは次のとおりです: 0.5秒間隔:気圧、気温、湿度の観測値の送信 0.25秒間隔:GPS受信機による3次元位置情報を送信(4Hzデータと呼ばれる) 0.25秒間隔:パラシュートで降下する際、ドロップゾンデは風場に埋め込まれるため、GPS受信機からも風を観測 非常に強いハリケーンの目の壁に投下されたドロップゾンデは、目の壁の風を追うように中心部を螺旋状に回り、しばしば目の反対側へ飛散することがあります。航空機は観測データを収集し、衛星を介して米国立ハリケーンセンターにリアルタイムで送信します。コンピュータモデルもこの観測データを受信し、研究者はそのデータを使用して嵐の構造を決定し、その強度と軌道を予測します。 今年もハイシーズンを支える 2021年のハリケーンシーズンは、21件の名前が付けられた熱帯低気圧と7件のハリケーンが発生し、平均を上回りました。米国空軍と米国海洋大気庁(NOAA:National Oceanic Atmospheric Administration)はハリケーンハンターを配備し、合計1,265時間飛行して143のミッションを遂行し、2,300個以上のドロップゾンデを投下しました。この重要なデータにより、より正確な予測や早期警告が可能となり、例えば2021年8月にシーズン最強のハリケーン「アイダ」が米国を襲った際のように、人命や財産を守ることができるのです。 インフォグラフィック「FROM SKY TO GROUND」(英語版) で、2021年のハリケーンやドロップゾンデを数字で確認し、2022年シーズンの予測などをご覧ください。 Image 2022年以降のハリケーンについて 2022年には6~10件のハリケーンを含む14~21件の名前付き熱帯低気圧の発生が予測されており(CSU2022年予測、NOAA予測 参照)、7年連続でハリケーンの活動が平均以上となる可能性が高いのは偶然ではありません。世界的な気候変動により、北大西洋は温暖化しています。ハリケーンに関しては、例え数度でも大きな違いがあります。海水温が高くなると、蒸発量が増えるだけでなく、熱帯低気圧を引き起こす潜在的なエネルギーも増加することを意味します。 ドロップゾンデを開発し、活用し続けることがますます重要になってきています。熱帯低気圧を止めることはできませんが、より良い備えをすることで人命を救うことはできます。 * RD41 ドロップゾンデは、米国大気研究大学連合(UCAR)のライセンスに基づきヴァイサラ社が製造しています。ハリケーンハンターが使用するRD41 ドロップゾンデ、航空機データシステムのハードウェア、およびソフトウェアは、米国大気研究センター(NCAR)の地球観測研究所によって開発されました。 画像著作権: 2021年8月29日、NOAA WP-3D Orion N43RF Miss Piggyから見たカテゴリー4のハリケーン「アイダ」の目の壁上部に見える太陽。写真:NOAA隊Kevin Doremus中佐撮影 Infographic: Sky to ground - Vaisala-built dropsondes shine a light on hurricanes1.62 MB