Q&A 動画:データロガーの精度およびリソースに基づく適格性の再評価

Paul Daniel
ポール・ダニエル
シニア レギュラトリ・コンプライアンス・エキスパート
Published:
ライフサイエンス

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このビデオインタビューでは、ヴァイサラのシニアレギュラトリーエキスパートがお客様や業界の窓口ご担当者からの3つの質問にお答えします。追加でご質問がある場合は、このページにコメントを記載もしくはメールにてお問合せください。

 

[00:00:08] ヴァイサラのビデオブログへようこそ。私はヴァイサラのライフサイエンスマーケティングマネージャー Janice Bennett-Livingston と申します。今回はシニア GxP レギュラトリーエキスパートである Paul Daniel にも参加してもらっています。今日は他の Q&A セッションでも、お客様からメールで寄せられた質問に Paul がお答えします。それではさっそく質問に移りましょう。Paul、準備はいいですか?

Paul:大丈夫です。

[00:00:59] ありがとうございます。それでは1つ目の質問です。「モニタリングロガーとマッピングロガーの温度規制への準拠について。マッピング試験の合格基準はどのように設定されていますか? 私が使用しているマッピングセンサの精度は±0.5°C、モニタリングロガーの精度は±0.3°Cです。これらは互いに近距離内に配置されていますが、表示値の差が0.8°Cを超えることがあります。この状況は問題でしょうか?」

[00:01:32] Paul:なるほど。端的にお答えすると、モニタリングセンサとマッピングセンサは、値が完全に一致している必要はありません。一致するに越したことはありませんが、マッピングで必要なのは、センサの精度の検証です。そのため、センサ同士を比較するのではなく、センサが校正されているかを検証することが必要です。モニタリングロガーについては、有効な年次校正証明書が発行されている必要があります。マッピングセンサについては、事前校正と事後校正を実施して、試験の前後に校正が行われたことを示す必要があります。センサの精度を検証する場合、これが重要な合格基準となります。

校正済みの2つのセンサの計測値は、ほぼ同じになると考えがちです。しかしそのような状況は、校正試験所など厳重に管理された環境でしか発生しません。このマッピングでは、計測の不確かさの要素が大きい、管理されていない状態で比較を行っているのではないでしょうか。エリア内に多少の空気の流れがあると、2種類のセンサの応答時間や分解能の違いなどの変化をもたらします。そのため、本当の意味での比較は非常に難しくなります。計測の不確かさを数値化するには、管理された状況下で、資格を持つ計量学の専門家が行う必要があります。つまり、校正試験所での実施です。マッピングロガーの精度が0.5°Cで、モニタリングプローブの精度が0.3°Cの場合、0.8°Cの差が見られるのはあり得ないことではなく、問題ではありません。マッピングプロトコルに、センサが完全に一致する、または一定量の範囲内で一致する必要がある、という具体的な基準が含まれていない限り、センサが適切に校正されているかを検証するだけで十分です。

[00:03:22] わかりました。では2つ目の質問です。

「温度管理された部屋を定期的に再マッピングする必要があります。温度に関する適格性の再評価を24時間行うべきか、72時間行うべきかを見極めたいと思っています。初期の試験は72時間で実施していますが、静的な状態と動的な状態のどちらでもこの方法が必要でしょうか。個人的には、静的なチャンバー全体で24時間の試験を実施すればよいと思っています。なぜなら、72時間の試験によって、積載なしと積載ありのチャンバーで静的な状態と動的な状態がすでに実証されているからです。

私は、試験をやり過ぎるべきではないと思っていますが、インターネットでいろいろ検索してみると、初期の適格性評価について、適格性評価と検証のあらゆる側面について非常に多くの情報が見つかります。しかし、適格性の再評価や再検証の実施に関する情報はあまりありません。世界保健機関、FDA、EU などのサイトも調べましたが、求める情報は得られませんでした。アドバイスをお願いします。」

[00:04:34] 私自身も、こちらのお客様とまったく同じ体験や結論に至ったことがあります。マッピングや最初の適格性評価については多くの情報がありますが、適格性の再評価に関する情報はほとんど見つかりません。私が知っている最良の手引きは、ISPE(International Society of Pharmaceutical Engineers:国際製薬技術協会)による、温度制御チャンバーのマッピングに関する適正基準ガイドです。実は私もこのガイドの作成に関わっているので、これを勧めるのは少し気が引けることもありますが、今こうして私の話に耳を傾けてくださっている皆さんなら許してくださるでしょう。ISPE のガイドの中には、300ドルほどの高額なものもあります。しかし温度マッピングに真剣に取り組もうとするなら、入手する価値があります。つい今ご紹介した ISPE ガイドには、基本的に1〜5年に1回、再マッピングを行うように記載されています。これは、マッピングの対象となる所定のスペースでの実績、履歴、重要性に基づきます。このガイドでは、使用したアプローチを文書化し、リスク評価によって選択の正当性を示すことで決定事項を再点検することを推奨しています。

これはまさしく、質問者であるお客様が提案している方法、つまり使用中のチャンバー全体について短時間のマッピングを行うという方法です。このアプローチは、ガイドに示されている ISPE の推奨事項と完全に一致しています。装置の故障や修理の履歴がなければ、この方法は理にかなっていると思います。また、積載物のある状態でマッピングを行うのは簡単ですね。試験のためだけにチャンバーを空にするよう所有者にお願いする必要がありませんので。

[00:06:03] わかりました。それでは3つ目の質問です。

「ヴァイサラには、ビジネスニーズの急速な変化に伴う倉庫マネジメントに関する資料はありますか?私は自社の倉庫のマッピングを担当しています。倉庫では常に変更が行われるため、何度もマッピングを繰り返す必要があります。変更があったエリアだけをマッピングするモデル、または変更後に季節ごとのマッピングを行わないというモデルはあるのでしょうか?」

Paul:このお客様が、非常に困難な状況で規制準拠の維持に努めておられることは、非常に素晴らしいと思います。私の経験では、倉庫のマッピングに真剣に取り組み、季節ごとのマッピングを含む定期的な再マッピングを行っている担当者は多くありません。マッピングの要件を下げるためにできることは、いくつかあります。しかしそれは、一般的なリスクを基にしています。

このような議論が可能なのは、すでに適切なマッピング履歴があり、それを利用できる場合に限られます。そのため、本当に必要なのは倉庫スペースの基本的な温度変化を把握して、他の状況ではどうなるかを判定することです。そうして初めて、何もかもマッピングする必要はない、と確信を持って言うことができるのです。裏付けと基本的な理解がなければ、確信は持てません。

このお客様の状況は、私が「連続マッピング」と呼んでいるケースに当てはまると思います。基本的には温度モニタリングと同じで、マッピングに使用するのと同じ台数のデータロガーを使用します。つまり、通常の2倍から3倍の台数のロガーを使ってモニタリングを行います。

この方法ではロガーを追加購入し、それを校正し続ける必要があるため、初めは高コストだと感じられるでしょう。しかし実際に計算してみると、マッピングが非常に簡単になるため、マッピングごとにかかるコストは節約できます。マッピングロガーのメンテナンスを行ったり、マッピングロガーをレンタルしたりする必要はありません。シザーリフトやフォークリフトを使って、10メートルを超える積載品の上部の危険な場所にロガーを配置することもありません。このような時間の節約は、コストの削減につながります。変更のたびに倉庫を年に1回マッピングする必要があるといった状況では、特に効果的です。

この連続マッピングというモデルでも、検証を行うことは必要です。また、期間を検討して選択し、データを確認してパフォーマンスを正式に検証することも必要です。それでも、特定の期間のデータを取得するだけで済むため、はるかに楽になります。

倉庫の連続マッピングというまさにこのトピックに関して、今後のウェブセミナーをお知らせしておきます。今月下旬に行う予定ですので、関心のある方はぜひご参加ください。

[00:09:08] ぜひ、6月24日に開催されるウェブセミナー『継続的なマッピング:データとコンプライアンスの向上(Continuous mapping: better data, better, compliance)』にご参加ください。こちらのウェブセミナーはオンデマンドで視聴いただけます。(英語のみ)Paul、ご参加ありがとうございました。皆さまも、視聴いただきありがとうございました。それではまたお会いしましょう!