アプリケーションノート
過酸化水素蒸気によるアイソレーター、cRABS、パスボックスの除染
アイソレーター、閉鎖型アクセス制限バリアシステム(cRABS)、トランスファーハッチ(パスボックス)(TH)は、医薬品の製造、前臨床試験および臨床試験、細胞治療の準備過程、組織バンクの設置などの用途で使用されています。本記事では、アイソレーターに焦点を当てますが、同じ原則は、他の安全性および純度を担保するための装置にもあてはまります。
アイソレーターは、国際規格ISO 5の要件を満たした大気が供給される機器であり、アイソレーター内部を外部環境から連続的に 徹底して隔離します。アイソレーターは、薬剤やワクチンの製造、無菌充填、無菌試験、薬剤の調合など、さまざまなライフサイエンスの用途で使用されています。アイソレーターは、微生物が混入していないことを確認するために滅菌剤で定期的に洗浄しなければ なりません。これら滅菌剤は、マイコバクテリウムや細菌胞子などの抵抗性の高いものを含め、ウイルス、バクテリア、イースト菌、カビ、菌類など、考えられるあらゆる形の微生物に効果的でなければなりません。アイソレーターを除染剤で除染する場合、微生物において最低6-logのバイオバーデンを達成する必要があります。
過酸化水素蒸気(過酸化水素)は、この目的で一般的に使用されている滅菌剤です。過酸化水素蒸気は、低温で作用し、多くの生物的汚染物質を破壊します。また、さまざまな素材と適合性が高いことでも知られています。さらに、水分と酸素に分解するため、 表面に残留物が残らず、除染後に拭き取る必要がありません。したがって、過酸化水素が、微生物を除去するために二酸化塩素、 ホルムアルデヒド、エチレンオキシドなどの他の除染剤の代わりに幅広く使用されていることも納得できます。
アイソレーターのサイクル・デベロップメントは、 信頼性の高い計測値に依存
アイソレーターの除染サイクル・デベロップメントの分析を行う場合、過酸化水素ppmの含有量、湿度(相対湿度と相対水分飽 和度)、温度、暴露時間に関する正確で安定した繰り返し性のある計測値は重要です。
理論的には、再現可能なサイクル・デベロップメントは、7つの段階に分けることができます(すべての段階が必須ではありません)。
- 除湿の分析
- スモークパターンの研究、 温度、蒸気の研究 (温度と湿度のマッピング)
- 予備的な致死率の研究(生物学的または酵素インジケーターを用いた試験)
- ワーストケースの致死率の研究(生物学的または酵素インジケーターを用いた試験)
- エアレーション分析
- プロセスの検証
- 定期的な再検証
アイソレーター内の環境条件およびその分布の信頼性の高い計測は、これらすべての段階を実行し、除染サイクルを素早く簡単に検証するために必要です。
除染:管理および監視
アイソレーターの適格性確認を実行し、 除染サイクルを検証した後、製造プロセスのニーズに沿って、過酸化水素蒸気による除染を繰り返します。除染サイクルの間隔は、製造する製品およびアイソレーターで実行するプロセスの種類によって異なります。プロセスによって、 除染は、1日数回でも年1回でも実行できます。除染は、重要なプロセスであり、時間がかかることが一般的です。除染は、4つの段階に分けることができ、すべて慎重に管理および監視しなければなりません。4つの段階を下記に示しています(図1を参照)。
- 除湿(平均目標湿度5~40%;この段階は、除染にウェット方式ミクロ結露 /結露が含まれている場合は省略できます)
- 調整(除染の正しい条件を調整)
- 除染(平均目標値:過酸化水素600~ 1000ppm、湿度50~100%)
- エアレーション(過酸化水素を除去します。通常、過酸化水素は、触媒コンバーターにより水蒸気と酸素へ分解します)
環境条件(過酸化水素ppm、相対湿度、 相対水分飽和度、温度)を徹底的に管理および監視することにより、アイソ レーターで生産される製品の安全性が保証され、除染中の時間とコストが節約されます。
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図1 典型的な凝縮なしのアイソレーター除染プロセスにおける4つの段階の例