環境制御チャンバー内での気候変動の研究

朝日に照らされている苗
シェフィールド大学
United Kingdom
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シェフィールド大学には誇ることのできる環境制御施設があります。動植物学科には、植物成長の研究用に最先端の環境制御チャンバーと試験室が合計58室あり、極寒地から熱帯まであらゆる気候をシミュレーションできます。

シェフィールド大学は2005年に創立100周年を迎えました。1905年に設立された大学の歴史は、シェフィールド医学校が設立された19世紀初頭(1828年)までさかのぼります。現在、大学は70の学科で構成され、24,000人以上の学生がいます。動植物学科は、その研究、特に植物科学、動物学、微生物生態学で高い評価を得ています。また、植物成長の研究用の施設も注目に値します。これは、地球上のあらゆる場所やさまざまな生態系の植物が気候変動にどのように反応するかを研究するために、チャンバーと試験室の環境が制御された施設です。

環境の制御

シェフィールド大学の植物成長チャンバーは動植物学科内にありますが、分子生物・バイオテクノロジー学科などの他の学科もこの最先端のチャンバーを利用しています。最大のウォークインチャンバーの床面積は15m2以上です。チャンバーはコンピュータ制御されており、温度、湿度、光合成有効放射および二酸化炭素濃度を監視します。チャンバーでは湿度とCO2の計測にヴァイサラ製品を使用しています。最新のチャンバーには、ヴァイサラ CARBOCAP® GMP343 CO2プローブが装備されています。「新たなプロジェクトすべてでヴァイサラのプローブを使用する予定です」と、同学科の研究室室長Darren Rose氏は言います。

制御環境では温度は夏から冬まで、湿度は乾燥ツンドラから熱帯雨林まで、CO2濃度は周囲濃度から最大2,000ppmの高濃度までに及びます。現在の開発目標は、多数のチャンバーのCO2制御範囲を、屋外のCO2周囲濃度(通常は約380ppm)にかかわらず、準周囲濃度の180ppmから高濃度の4,000ppmまで拡張することです。

Researching plants

将来を見据えて

シェフィールド大学のチャンバーは、地球上のあらゆる環境をシミュレーションできます。チャンバー内で行われる研究は、植物に対する気候と大気の変化の影響を見極めることを目的としています。将来、大気中のCO2濃度が上昇することはほぼ確実であるため、CO2濃度の上昇が地球の植生に与える影響と、現在の生態系がどのように変化するかを研究する必要があります。大気中のCO2濃度、世界の植生分布とその構造、および現在の気候は、非常に複雑な形で関連しています。これらの領域のいずれかにおける変化は、大気と生物圏の間の陸域の炭素循環全体に影響を及ぼします。

食糧生産においても、気候変動が作物の成長に与える影響を理解することは重要です。気候変動は、作物を壊滅させるおそれのある害虫や病気の数と種類にも影響を及ぼします。植物成長チャンバーで行われる実証研究が多ければ多いほど、将来の気候シナリオのモデルをより正確に構築することができます。気候の将来の変化を研究することに加えて、制御環境は過去の気候イベントもシミュレーションします。たとえば、先史時代の氷河期をシミュレーションするCO2準周囲濃度の極地環境は、ボタンをいくつか押すだけですぐに設定できます。過去の気候をシミュレーションすることは、研究者が植物の進化に対する気候変動の影響を理解するのに役立ちます。

チャンバーの校正

チャンバーは頻繁に使用され、高い基準が求められるため、少なくとも6か月ごとに保守を行う必要があります。「非常に厳格な校正手順を定めています」と、研究室室長として施設の円滑な運営の確保を担っているDarren Rose氏は言います。ヴァイサラのHUMICAP® HM70 ハンディタイプ湿度温度計とCARBOCAP® GMP343 CO2プローブで構成される校正セットは、チャンバーの現場チェックに頻繁に使用されています。

拡張計画

動植物学科には、2つの研究用温室と1つの極地シミュレーション研究用の生育室を建設して、そのすばらしい施設を拡張する計画があります。新しい施設により、制御環境エリアが約500m2広がり、温度、湿度、光、CO2濃度を制御および監視できる可能性がもたらされます。

Darren Rose, University of Sheffield
Darren Rose is the Laboratory Superintendent at the Department of Animal and Plant Sciences, University of Sheffield.

 

本記事は、Vaisala News 2005年169号(フィンランド、ヴァイサラヘルシンキ、Maria Uusimaa)に掲載されたものです。