火星へ出発!研究者たちが|赤い惑星に関心を寄せる理由

火星のイラスト。赤い地表と山々。
Maria Genzer
Finnish Meteorological Institute, Group Head of Planetary Research and Space Technology Group
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イノベーション・インスピレーション
宇宙探査

地球の近くにある火星は、大気研究者たちにとって魅力的な研究対象です。この不毛の惑星の大気は、地球の大気から状況を複雑にする要素を取り払き、単純化したモデルと言えます。

太陽の周りを回るすべての惑星のなかで、火星は多くの点で地球に似通っています。 

火星の大気は主に二酸化炭素で構成され、低温で乾燥しており、密度は地球の大気の約100分の1です。一方で、地球と火星の自転軸の傾きはほとんど同じであり、1日の長さもほぼ同じです。このような特徴のため、地球と火星の大気は同じように振る舞います。

惑星の比較研究を実施できるのは、2つの惑星の大気にこうした類似の特徴があるからです。火星を研究することで、地球とその大気について新しい知見を得ることができます。地球の大気を研究する際には、水や植生の影響が大気現象の効果を覆い隠すことがあるため、注意が必要です。一方、火星にはこのような阻害要因は存在しません。

火星が変化した理由

調査によると、かつての火星はもっと地球に似ていました。数十億年前、火星には大きな海があり、川が流れていました。細菌のような原始的な生命さえあったのではと見られていますが、その証拠はいまだ発見されていません。

液状の水が存在するには、現在の火星よりも大気はかなり濃く、気圧はもっと高くなければなりません。しかし、火星の大気は薄くなり、大半は宇宙へと消えたため、私たちが今日知る不毛の惑星が後に残されているのです。なぜ、そしてどのように今の姿になったのでしょうか。

火星とその大気現象を研究することで、地球の大気とその振る舞いについても知ることになります。このようにして、天気や気候についても理解を深めることができるのです。

予測できる火星の天気 

フィンランド気象研究所とヘルシンキ大学は共同で研究を進め、北欧諸国全域で使用している天気予報モデルを火星にも使用できるように改良しました。現在の火星では誰も生活していませんが、天気は地球と同じように予測できます。ただし、現時点ではこの天気モデルは研究目的にのみ使用されています。

国際宇宙機関が有人惑星間飛行計画を実施する場合、その最初の目的地は火星になるでしょう。人々が火星に送られることになれば、砂塵嵐の確率など、火星の天気に関して高品質かつ正確な情報が得られることが重要になります。

また、無人宇宙船が火星を離着陸するたびに大気情報が必要になります。この情報はフィンランド気象研究所が開発した、ヴァイサラの技術に基づく計測デバイスを使って収集できます。

火星探査ローバー「パーサビアランス」、Copyright NASA/JPL-Caltech

地球外生命体は存在するのか

ヴァイサラは数十年にわたって宇宙に携わってきました。ヴァイサラの技術が、フィンランド気象研究所の協力を得て、NASAの火星探査プログラムの新しいローバー「パーサヴィアランス」に搭載されました。  

Maria Genzer, FMI, Copyright Tero Pajukallio Diaidea

Maria Genzer 氏

フィンランド気象研究所、惑星研究および宇宙技術グループ長

Mariaは圧力および湿度センサにかかわる宇宙計測プロジェクトを率いています。また、MEDA PSとMEDA HSの技術およびプロジェクトマネージャーであり、M2020のサイエンスチームのメンバーでもあります。1996年よりロゼッタ/コジミア、フェニックスの圧力センサ、MSLキュリオシティ/REMS、エクソマース 2016/DREAMS、BepiColombo/SIXSをはじめとする数多くの宇宙プロジェクトにかかわっています。

撮影: Teru Pajukallio, Diaidea