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CO2センサの自己発熱に関する 4つの質問

Vaisala

屋内/室内空気質

CO2センサの自己発熱とは どういうものですか。 また、なぜそれが問題になる のですか。

通常、CO2計測器内にある電子回路部 の自己発熱は主に、C O2計測に必要 な電力(赤外線光源)と、出力信号の生 成に必要なエネルギーの2つに起因し ます。

CO2センサの一般的な赤外線光源であ る白熱電球は、大量の電力を消費して 熱を発生させます。この熱は機器の内 部にこもります。もちろんある程度の放 熱はありますが、機器内の温度を周囲 と同じにまで下げられるものではなく、 機器内の温度は常に周囲温度よりやや 高くなります。

自己発熱は、CO2のみを計測するセン サには実質的な影響を与えません。しか し、機器が温度も計測する場合には、自 己発熱によって1°C程度、あるいはそれ 以上の温度計測誤差をもたらすことが あります。

自己発熱は相対湿度計測に どのような影響を与えますか。

温度の場合と同様に、熱源付近では相 対湿度を正確に計測することができ ません。相対湿度は温度に依存するた め、自己発熱は計測結果に影響を及ぼ します。

図1は、+1°Cおよび+2°Cの温度誤差が 室温(20°C)における相対湿度の指示 値にどのような影響を与えるかを表して います。横軸はこの環境における湿度、 縦軸は相対湿度(%RH)計測の誤差を 示しています。

湿度計測の誤差は相対湿度の増加に応 じて増えます。また、自己発熱が増える ほど誤差が増えます。例えば、相対湿度 50%RHで周囲温度20°Cの場合、自己 発熱が+1°Cの機器には-3%RHの誤差、 自己発熱が+2°Cの機器には-6%RHの 誤差が生じます。 

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室温(20°C)における +1°Cおよび+2°Cの自己発 熱による相対湿度指示値の 誤差


図1:室温(20°C)における +1°Cおよび+2°Cの自己発 熱による相対湿度指示値の 誤差

自己発熱の温度や湿度への 影響は補正できますか。

センサメーカーが、自己発熱による温 度計測への影響を補正するために自動 補正を検討した場合、理論上は、計測結 果から平均補正率分を差し引けば可能 です。

しかしながら、補正は一定の条件下では うまくいきますが、自己発熱量はすべて の条件下で一定というわけではありませ ん。空気の流れや、センサの裏側の壁の 材質によって変わります。その上、各機器 の計測精度を上回る補正率の適用には 問題があります。また、湿度計測の補正 は、温度の補正に比べていっそう困難で す。結論としては、自己発熱の補正はお 勧めできません。

自社でCO2センサの自己発熱 試験を行う場合は、どうすれば いいですか。

CO2と温度(および湿度)を1台で測定で きる機器の自己発熱試験は簡単で、特 別に高価な機器を用意する必要はあり ません。

  1. CO2/温度センサをパッシブ温度セン サ(自己発熱がほぼ無いPt100センサ 等)と並べて壁面に設置します。
  2. 機器の電源を入れます。直ちにCO2/ 温度センサの温度指示値とパッシブ温 度センサの出力を比較し、これら2つの 指示値の差を記録します。温度補正が行 われている機器については、補正の影響 で初期値がしばしばパッシブセンサより 低い値を示します。
  3. 電源を入れたままで、時々温度(およ び湿度)の指示値を記録します。自己発 熱の影響は徐々に現れるので、開始から 15~40分程度かかることがあります。

図2は、推定される自己発熱による温度 と湿度の計測値の挙動を示しています。 自己発熱による温度の上昇に伴って相 対湿度の指示値が減少します。

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自己発熱試験の例。 温度上昇と湿度現象が ほぼ平衡状態になるまで。


図2:自己発熱試験の例。 温度上昇と湿度現象が ほぼ平衡状態になるまで。

ヴァイサラ CARBOCAP® GMW90 シリーズ CO2 湿度温度変換器の 自己発熱試験結果

ヴァイサラCARBOCAP® GMW90 シリーズ CO2湿度温度変換器では自 己発熱傾向試験が実施されました。こ の結果を2種類の他社製品、(Sp2)お よび(Sp3)と比較しました。ヴァイサラ GMW90変換器は(Sp4)です。

図3は、電源を入れる前の各機器の熱 画像を示しています。すべての機器の温 度(Sp2、Sp3、Sp4)が背後の壁面温度 (Sp1)と平衡状態にあります

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Figure, Transmitter temperatures before power-up


図3:電源を入れる前の変換器の温度

図4は、電源を入れてから30分後の各 機器の熱画像を示しています。温度の指 示値は、機器内部の温度センサの位置 (熱源のCO2センサから最も遠い機器内 の最下部)から取得しました。各変換器 が示す温度には、明らかな差が見られま した。

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Figure, Transmitter temperatures 30 minutes after power-up


図4:電源を入れてから30分後の温度

試験の結果は表1のとおりです。結論と しては、3種の機器の自己発熱傾向には 顕著な差が見られました。最も発熱した (Sp2)は1.3°C、最も低かった(Sp4)は わずか0.2°Cでした。

GMW90変換器は、ヴァイサラが独自 開発した低発熱Microglow赤外線光 源 により比 較した 他 社 製 品を上 回る 性能を示しています。消費電力は、従 来の赤外線光源のわずか25%です。 Microglow技術についての詳細は、www.vaisala.co.jp/microglow をご 覧ください。

 電源を入れる前の
温度(°C )
壁面の温度との差
(°C )
電源を入れてから
30分後の温度(°C )
壁面の温度との差
(°C )
自己発熱による
温度変化(°C )
壁面の温度(Sp1)23.6 23.2  
機器(1 Sp2)23.5-0.124.41.21.3
機器2(Sp3)23.4 -0.223.90.70.9
機器3(Sp4)※23.4 -0.223.20.2 

 

表1:自己発熱試験結果

※ ヴァイサラ GMW90 変換器

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